大判例

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東京地方裁判所 昭和52年(ワ)170号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

被控訴人はその所有にかかる本件土地を担保に(担保の形式は限定せずに)、被控訴人を借主として金二〇〇万円ないし三〇〇万円を第三者から借受ける手続についての代理権を西村に与えた。ところが西村は、被控訴人のためにすることを示して、小林勝太郎との間で、西村の新規借受金一〇〇万円及び既存債務約二〇〇万円の合計約三〇〇万円の債務について、その弁済を怠つたときはいつでも債権者において本件土地を処分できるとの約定の下に、本件土地を小林勝太郎に譲渡する契約(本件譲渡担保契約)を締結した。

【判旨】

5 そこで、小林が西村に代理権ありと信じたことに過失がなく、したがつて正当な理由があるか否か(再抗弁)について判断する。

<証拠>を総合すると、

(一) 小林は、西村が本件譲渡担保契約の際に本件各書類<編注―被控訴人の登記権利証、白紙委任状、印鑑証明書>を持参してこれを小林に交付したことによつて西村に代理権があるものと信じ、被控訴人自身に右代理権の存否、範囲を確認はしなかつた。

(二) しかし、本件借入申込の際、小林は西村から、被控訴人に融資をする必要上、本件借入申込をするものである旨の説明を受けており、したがつて、本件土地を担保に供与することと本件借入申込との関連性を容易に察知できる状況にあつた。

(三) また西村が小林に交付した本件各書類のうち、委任状は委任者及び委任事項が空欄のいわゆる白紙委任状であつた。したがつて西村の説明以外にその委任事項を小林が知り得る方法は、同時に提出された登記済権利証及び印鑑証明書によつて、本件土地についてなんらかの登記をなさしめる意思が推断されるにとどまるものであつた。

(四) しかも小林は西村とは以前から金融取引をしていたが、日頃から西村の言動に対してはあまり信用をおいていなかつたし(この点は原審第一回証言において小林勝太郎自身が供述している)、小林は被控訴人を全然知らない。

(五) 小林は本件各書類を西村の事務所である東京都新宿区新宿一丁目所在の南西物産において西村から受取つており、被控訴人の住所が東京都杉並区内にあることは委任状及び印鑑証明書にも詳細に表示されているから、小林が被控訴人に直接、被担保債権あるいは西村の代理権の範囲について確認することはさしたる手間ではない。

(六) しかも小林は金融を業とするものである。

との事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

以上の事実によると、小林は本件譲渡担保契約締結に際しては、本件各書類と西村の説明だけで西村に本件譲渡担保契約締結の代理権があると信じただけでは注意義務を尽したことにならず、西村の代理権が西村自身の債務について本件土地を譲渡担保に供することについてまで存在するか否かにつき被控訴人にこれを確めるべき注意義務があり、これを怠つた小林には、西村に代理権があると信じたことにつき過失があつたものと言わなければならない。したがつて、結局小林には、民法第一〇九条、第一一〇条のいずれの場合についても正当理由を認めることはできない。

(山本和敏 松尾政行 瀧澤泉)

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